今回は、漫画村が閉鎖される可能性と政府がプロバイダに要請したアクセス制限について解説します。
アクセス制限の報道は?
2018年4月6日、毎日新聞で「海賊版サイト 政府、遮断要請へ 著作保護に「緊急避難」」という記事掲載されました。
政府は国内に拠点を置くインターネット接続業者(プロバイダー)に対し、ネット上で漫画や雑誌を無料で読めるようにしている海賊版サイトへの接続を遮断する措置(サイトブロッキング)を実施するよう要請する調整に入った。月内にも犯罪対策閣僚会議を開催し、正式決定する見通し。
また、以下のようにも掲載されています。
三つの海賊版サイトの具体名を挙げ、接続業者に要請する予定。
この3つの海賊版サイトの名前はまだ、公表されていないが、おそらく漫画村がその対象となるでしょう。
政府によるアクセス制限の経緯
スマートフォンなどの普及に伴い、2012年から電子コミックの売り上げは2017年7月までは増加の一途をたどっていました。
電子書籍情報まとめノート「電子コミックと電子書籍の市場規模(インプレス)」に非常にわかりやすくまとまっています。
以下の画像は、電子書籍情報まとめノート「電子コミックと電子書籍の市場規模(インプレス)」から引用しています。
こちらのグラフでは、2014年からのデータしかないが、年々20%の増加率で電子コミックの売り上げが増加しているがわかります。
またこちらの画像で見ると、電子媒体の販売のうち、多くが電子コミックの売り上げであることがわかります。
しかし、2017年8月に漫画村という海賊版サイトが広く知られるようになりました。
この漫画村というサイトを利用すると、販売されている電子コミックを購入せずに無料で閲覧することが可能になります。
今まで、電子コミックを買っていたユーザーも無料で漫画が見れるようになり、電子コミックを買わなくなるユーザーが増えました。
その結果として、2017年8月から電子コミックの売り上げが激減しました。
コンテンツの市場規模の調査などを行う「コンテンツ海外流通促進機構」は、海賊版サイトの利用により著作権側(作者や出版会社)におよそ4000億円以上の被害があったと政府に報告しています。
政府としては、「クールジャパン政策」の一貫して日本のコンテンツを大きな柱として考えています。
そのため、漫画村などの海賊版サイトを日本政府は非常に重く見ています。
漫画村への対応策
通常であれば、違法サイトが運営されていた場合、警察はそのサイト運営者を逮捕することでサイトを閉鎖に追い込むことが可能です。
漫画村の違法性
では、漫画村は違法サイトなのでしょうか?
漫画村では、大量の漫画を見ることができるようになっています。
しかし、2018年現在の日本の現行法では漫画村は違法ではありません。
漫画村が違法でない理由
著作権法における漫画の扱い
漫画や映画などの著作物の法的の扱い方は、「著作権法」という法律で規定されています。
著作権法では、著作者(作者・出版社)が自分の出版物を公衆送信(公に公表する)権利を所有しています。
つまり、画像をアップロードできるのは著作者のみとなっています。
著作権を持っていない人が漫画の画像をサイトにアップロードするのは違法行為となっています。
結論としては、漫画の画像のアップロードは違法であるということです。
漫画村はアップロードしていない
著作権法では、漫画のアップロードは違法行為となっています。
しかし、実は漫画村は画像のアップロードは行っていないのです。
インターネット上には大量のデータがあります。
どのような漫画のデータでも、インターネット上を隅々まで探せば、どこかにはアップロードされているでしょう。
漫画村では、漫画のデータを自動的に捜索するプログラムを作成しています。
そして、そのプラグラムで「すでにアップロードされた画像」をまとめます。
その「すでにアップロードされた画像」へのリンクを貼ることで、漫画村はなりたっています。
つまり、漫画村は「あくまでも画像へのリンクを貼っているだけで、画像のアップロードは行っていない」と主張しています。
もしこれが違法なのであれば、Googleの画像検索も違法であるとも主張しています。
たしかに、Google画像検索では多くの著作物を一覧で見ることができます。
これが事実なのであれば、確かに漫画村は、2018年4月現在の著作権法においては合法なサイトであることになります。
サイト閉鎖はできないのか?
漫画村自体の閉鎖
海賊版サイト漫画村事態のサイトは、難しいのが現実です。
現行の法律では、違法性は存在ないため、法的拘束力を利用して閉鎖に追い込むことはできません。
また、漫画村が運営されているサーバーは、日本のサーバーではありません。
日本のレンタルサーバーなどであれば、そのサーバーの運営元に掛け合うことで閉鎖に追い込むことが可能です。
しかし、海外サーバーではそうはいかないでしょう。
画像リンク先サイトの閉鎖
では、漫画村が画像を収集しているサイト自体を閉鎖することは可能なのでしょうか?
法律上は、不可能ではありません。
しかし、著作権法違反は親告罪となっています。
親告罪とは、被害をうけた人が警察に被害を申し出ない限り、警察も捜査することができない罪のことをいいます。
つまり、それぞれの漫画の作者が警察に被害届を提出しなくてはいけません。
現実問題、多くの手間が必要となるため、それを行う著作者は少ないです。
また、仮に被害届けが提出されても捜査に何年もかかる可能性が高いです。
画像がアップロードされてるサーバ-の多くは海外サーバーです。
つまり、日本の警察がそのサーバーを直接、捜査をすることはできません。
あくまでも、著作権法に効力があるのは日本国内のみだからです。
外交的ルートなどを通じて、あくまでも「協力」という形で現地の警察の協力してもらうことはできるかもしれません。
しかし、実際にそれが行われ、サーバーが閉鎖されるまでには、何年もの時間が必要となるでしょう。
プロバイダによるアクセス制限
以上の通り、サイト自体を閉鎖することはできないのが現実です。
そこで、政府は利用者である私たちを制限することを考えました。
私たちはインターネットを利用するときに、プロバイダという通信事業者を経由して通信を行っています。
スマホであれば、auやsoftbank、docomoのことです。
この会社は私たちが通信している内容を閲覧することが可能です。
政府はこのプロバイダに、漫画村へのアクセスを規制させようと考えました。
4月中にも犯罪対策閣僚会議を行い、プロバイダに協力を要請するようです。
漫画村アクセス制限の問題点
1.憲法21条に違憲
ただ、日本国憲法では第21条において「通信の秘密」というものが定義されています。
明らかに違法行為を行っている人以外の通信を裁判所の許可なく、通信の制限や閲覧を行ってはいけないとなっています。
これは、表現の自由を制限しないために決められている法律です。
仮に、政府が漫画村へのアクセスを制限してしまっては、憲法21条「通信の秘密」に抵触するおそれがあります。
2.法的根拠がない
日本は法治国家です。
何事においても、法律や条例を元に活動を行う必要性があります。
漫画村などの海賊版サイトへのアクセス制限に法的根拠はありません。
そのため、あくまでも「プロバイダへの協力」という形をとっているのです。
その国の政府が法律にもとづいていない指示を民間団体(プロバイダ)に行ってもいいものなのうでしょうか?
3.検閲の悪しき前例
中国では、すべてのインターネット上の情報は中国当局の管理下におかれています。
中国政府にとって、都合の悪い情報はすべて、アクセスできないようになっています。
これは、グレートファイアーウォールと呼ばれ、ネット検閲としてもっとも有名です。
中国以外でも、複数の国でインターネット上での言論統制が行われています。
漫画村へのアクセス制限を日本政府が行ってしまったら、それは一種のネット検閲となるでしょう。
法的根拠がなければ、なおさらです。
もし、一度でも法的根拠のないネット検閲が行われてしまったら、これからも同様のことが起こす際の悪しき前例となってしまうでしょう。
漫画村アクセス制限の回避方法
もし、漫画村へのアクセスが制限されてしまったら、回避方法はあるのでしょうか。
それはあります。
アクセス制限は、プロバイダによって行われています。
つまり、プロバイダが私たちの通信を見ることができなければ、アクセス制限を行うことはできなくなるのです。
私たちの通信をすべて暗号化すれば、プロバイダは私たちの通信を見ることはできません。
では、どうすれば通信を暗号化できるのでしょうか?
VPNを利用する
VPNというサービスを利用すれば、通信をすべて暗号化することが可能です。
VPNとは、「VirtualPrivateNetwork」という名称の略称です。
日本語にすると、「仮想的な秘密のインターネット」と訳せます。
これを利用すると、漫画村にアクセスする前に別の専用のサーバーと接続することになります。
そして、その専用のサーバーと私たちのパソコンの通信は暗号化されることになります。
そのため、プロバイダは私たちの通信内容を見ることはできません。
また、通信先も漫画村などの海賊版サイトではなく、その専用サーバーと通信しているかのうになります。
そうすることで、漫画村などの海賊版サイトとのプロバイダ規制を回避することが可能です。
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管理人の個人的意見
管理人個人の意見としては、漫画村の存在自体には犯罪です。
もし、仮にもっと多くの人が漫画村で漫画を読み、漫画を買う人がいなくなってしまっては、漫画業界全体が衰退することになるでしょう。
私は漫画はあまり読みませんが、アニメを見ることはあります。
多くのアニメは漫画を元に制作されています。
そういったアニメがなくなってしまうのは非常に悲しいです。
しかし、検閲には反対です。
一度、検閲を行ってしまうと今後も、政府に都合の良くない情報などが検閲され、インターネットにおける表現の自由がなくなってしまう可能性があります。
プロバイダへのサイトブロッキング要請より先に、まず法整備が重要だと私は考えています。
コメント
VPNで対策してかえても日本のプロバイダーを一度とおしている時点でブロックされてしまうのでVPNを変更することは意味がないですね
海外のプロバイダーを日本にいてアクセスする方法をお願いします
VPN情報局にコメントありがとうございます。
理論的には、VPNを利用するで政府が要請しているサイトブロッキングを回避できます。
しかし、現在、漫画村はサーバー自体が閉鎖されてしまっています。
※正確には、サーバーは生きているようですが、そこに行きつくIPアドレスがわかりません。
他にも、疑問点などありましたら、コメントをお寄せください。